香りの文化史で、貝原益軒の香薬を調べていましたら、ある高名なお坊さんから黒田藩御用窯、味楽氏を紹介頂き、2014年、味楽窯美術館に訪問した時の話しをまとめて見ました。
十五代亀井味楽氏
福岡には、高取焼の老舗を至る所で見ることが出来、それぞれに個性があり、楽しむ事は出来ます。
中でも、福岡空港から20分の早良区高取に千坪もの、敷地内にある未楽窯美術館は、
黒田藩御用窯として、4百年以上続く高取焼は移窯を繰り返し、300年前に福岡城のお膝元である高取に移され、以後、途切れること無くその地で、技術継承されて来たとのことです。
黒田藩主のお膝元での役割は命がけであったに違い無い事が味楽氏に会うと、感じる事が出来ると、紹介を頂いた方々から聞き、味楽氏を訪ねてみました。
神の手を持つと言われている、15代亀井 味楽氏が「陶芸について」語る時の、歯切れの良い、リズム感のある言葉、そして、目は、鋭く隙が無い方で、その道一筋を歩む方だと、背筋を正したくなる様な空気感を醸し出していらっしゃいます。
味楽氏の講演や、美術館に訪れた人々を案内していらっしゃる当代の姿を観察していますと、血気高い侍を唸らせ、心の拠りどころとなる空間造りにと…
陶芸で魂を磨いてこられた一族の姿を伺い知ることができます。
とても、宇宙観ある、不思議な方です。
茶碗の選び方
味楽窯美術館、はいつでも、誰でも訪れて美術館内を見る事が出来ます。
私も抹茶が好きで、家で1人一服する、その際、抹茶は高温の湯で、立てると滑らかで、美味しく頂けますが、熱くて茶碗が持ちにくく、茶碗にもよりますが、持ち上げる時に落としそうになります。
学生の頃、茶道の師匠から、お稽古を重ねたら、皮膚が固くなり熱さが平気になると教いました。
それと、集団用のお手軽茶碗だからとも…
しかし、若いかった私は、心でつぶやいていました。
戦国武将に、熱い茶碗を持てるようになるまでの、修行を重ねる時間があったでしょうか?
織田信長は、どうだったでしょうか?豊臣は?黒田官兵衛は?…真剣に考えたくなるほど、茶碗が熱くて苦手でした。
上記は、お茶碗と、お皿です。
因みに夫は焼酎を飲んでいます。
味楽窯美術館を切り盛りしている女将が、お茶を一服進めてくれたので、恐る恐る、抹茶茶碗を持ち上げましたら、軽くて、ほんのりと、温かかったので、抹茶をゆっくりと飲むことが出来ました。
そこで、長年の疑問を女将に尋ねて、茶碗の選び方を訪ねてみました。
女将は静かに答えてくれました。
味楽窯では、茶碗の底に、工夫がなされているという事です、自分の手に馴染む茶碗を探し、買い求める事を教えて貰いました。
このように、陶芸とは美しさも去ることながら、細かな所に心を向け、仕上げていく・・・だからこそ、武将の心を鎮める事が出来たのかもしれないですね。
先人が香炉に託した【お香の神秘】
古の人々は、神々に捧げるお香の神秘を香炉に託しました。
香道欄の園に記され受け継がれて来た香道・・・
聖徳太子から始まったお香遊びは、平安時代中期の第六十五代一条天王も香を弄んだと記されています。
例えば、香と、烟りは、神様の光をあらわし、芳盆は、田子の浦の浪(田子の浦の浪の蒔絵)を描いたもの、たとう紙は、三の保のまつばらを描いたもの。
香炉は、三の足の、日、月、星の三つの光を表して、また、天、地、人の三ッとして、我が国では神秘として表現する。
香を炷く家は全ての神々が守りくださるとの事。
高取焼にも、香炉が残されており、美しいばかりではなくて、使い勝手が良く、でざわりは無論のことですが、香を炷くときの温度や、炭の持ちも香炉の厚さで管理、調整出来るのです。
全て手びねりなので多少の違いはあるものの、組香(香り当て)でも全く問題ないく
同じ環境が保てる。
実にお気に入りの香炉の一つです。
千坪の緑に囲まれた登り窯
現在は消防法で登り窯をつかう事が出来ず、時代を受け入れて、その研究にも熱心です。
が、何よりも、朝、夕、美術館前や、登り窯当たりを掃除を行う、味楽氏の姿は何だか心なごみます。
窯の前にいらっしゃるお稲荷様はご利益があると、人気のスポット!!!です。
毎朝、毎夕、3百年以上も地域を見守る、尋ねて来た武将も手を合わせたのかな?
そんな事を思いで、手を合わせました。
未楽窯美術館
アクセスは下記の通りです。
福岡空港から地下鉄藤崎駅まで29分高取商店街を徒歩で8分程度、高取商店街を散策して、未楽窯美術館近くの、紅葉八幡宮もありますので、秋の紅葉を楽しんでみてはいかがでしょうか。
美術館入り口に天然工房のパン屋さんも人気です。
住所 | 〒814-0011 福岡県福岡市早良区高取1丁目26−62 |
営業日時 | 月曜日~日曜日10時~17時 |
電話 | 092-821-0457 |
最後に
味楽一族は武将の嗜みと、鬱憤をはらす役割を無心に勤め上げた人々、その時代の人々はどの様な思いで武戦国将の生きざまを支え、見ていたのでしょうか?
いつか、味楽氏から、黒田家の言い伝えを聞いてみたいものです。
今回の旅は神の手を持つと言う当15代・未楽窯一族に根付いてる武将と共に、磨きをかけたその精神を垣間見る事ができました。
時々、自分が小さく感じた時、古の精神に触れたくなった時、緑豊かで四季折々の花々で迎え入れてくれる、未楽窯美術館を尋ねてみよう・・・
内緒ですが、早朝は、味楽氏が、庭をはく時間帯、爽やかな笑顔でが見れて、少し話が聞けるかも!!!
ラーメン(おまけ)
高取商店街近郊で地下鉄にも近い場所に、味一番というラーメン屋さんがあります。
お店に近くなりますと、何処からか動物臭が風にのって来て、空きっ腹ですと、間違いなくたどり着くラーメン屋さんです。
こってりとした濃厚なラーメンですが、何故か食べ過ぎた感覚が無く、それどころか、寒さで凍え消耗した身体に染み渡っていくスープの美味しさは例えようがないほど贅沢に感じました。
アットホームな雰囲気で家族的な商いで地元の方々が殆どであるなので、更に心を満たしてくれました。
顔や、髪にはコラーゲンパックし、家には味一番の香りを土産に持ち帰りました。